先輩起業家インタビュー
Interview
水は、人々の生命や生活だけでなく、多様な産業のものづくりにも欠かせません。日々、さまざまな工場では大量の水が使われ、捨てられています。そうした排水をきれいにしているのが、富山市にある『株式会社ネクストリー』。排水処理に必要なオリジナル薬剤の開発・製造・販売などを通して、水環境と人の暮らしを守り、持続可能な社会に貢献しています。平成26年(2014)12月19日に同社を設立した代表取締役の藤井喜大(ふじい・よしひろ)さんに、設立の経緯や当時の苦労、これからの展望などをお聞きしました。
最も多く水を使う製紙会社は 1 日 に約10 万トン、食品会社でも 1 日に 50〜 100トンの水が毎日使われています。私たちのターゲットは、それよりも規模が小さい「1 日 10トン以下」の排水。ただ、排水量が少なくても全量を産業廃棄物として捨てるより、排水処理をした方が環境にも優しくコストの削減にもつながります。排水処理の際、お客様に使用いただいているのが、オリジナル薬剤。複数の薬品効果を1つにまとめたものですので、誰でも簡単に短時間で作業を終わらせられます。水処理に関する知識が要りません。また、お客様のニーズに対応しているうちに、水と汚泥を分離させる設備などの設計・納入も行うようになりました。
ネクストリーには、前身の会社があります。その創業者は私ではなく、知人でした。創業から約1年後に声をかけられて水処理業に興味を持ち、その会社の社員になりました。ですが、その知人である前社長とは、価値観や考え方などが大きく違いまして。協議を続けた結果、私が会社を引き継いで代表になることになりました。銀行や税理士の方からの提案を受けて、約3年後には『株式会社ネクストリー』を設立して事業譲渡を行い、リスタートしました。今も一緒に働いている役員と私の2人だけでしたが、どちらも水処理業界に関しては経験も知識も素人同然の状態。しかも、資本金がゼロで、顧客が1社もなく売上もゼロ。それでも引き継いだのは、ここで辞めると中途半端な人生になるような気がしたからです。しっかりと形にするまでは続けることを決意しました。
やはり1番大変だったのは金銭面ですね。弊社の設立時には、会社の信用もなかったため、銀行の通常融資を受けることはできません。信用保証協会の保証が付いた創業者支援融資を利用し、資金調達をするところから始めました。その後も幾多の困難はありましたが、銀行の方々の親身な支援によって、なんとか乗り越えることができました。
また、公的機関の支援も活用。富山市では、市内で事業を営む中小企業者等の資金調達をスムーズにするための融資制度が設けられています。運転資金の利子の一部を富山市が補填する仕組みとなっており、利子の負担を抑えることができるため、その制度を活用しました。今もオンタイムで活用させてもらっています。また、富山県内の中小企業を対象に、新商品・新技術の開発や販路開拓などのへの取り組みを資金面で支援する、富山県の「とやま中小企業チャレンジファンド事業」なども活用させてもらいました。
設立当初、弊社にはオリジナル薬剤の配合レシピ1種類だけがありました。それを武器に、製紙会社や食品会社に飛び込み営業やテレアポをしましたが、価格面で他社に太刀打ちできません。苦戦の日々が続きましたが、今できることに注力し続けました。同時にホームページのブログ記事も作成。最初は何の音沙汰もありませんでしたが、その記事を見た方から少しずつ問い合わせが来るようになっていったんです。また、薬剤も1種類のレシピをもとに、自分たちで試行錯誤しながら研究開発して種類を増やし、さまざまなニーズにお応えできるようにしていきました。
さらに、今から約5年前に「10トン以下」という小規模な排水処理に特化したことも相まって、売上が徐々に上昇。飛び込み営業をしなくても、ホームページにお客様から数多くの問い合わせが届くようになりました。今、新規のお客様はほぼ100%ホームページからなんですよ。ありがたいことに、北海道から沖縄まで全国各地のお客様からご依頼いただいています。
11期目に入る時には、成長が期待される富山市内の中小企業を顕彰する「令和6年度富山市ヤングカンパニー大賞」の優秀賞に選ばれました。本当にありがたかったですね。ニッチな分野に特化したホームページによる集客や、独自の薬剤技術、収益性の向上などを評価いただけたのだと思っています。
今の目標は、2030年に売上 10億円達成。あと5年間で売上を 4倍にしなければいけません。そのために、毎年 140%ずつ成長していくことを目指しています。今、社員は9名ですが、より増やしていきたいですね。
私の好きな言葉は、「知っている、できる、やっている」です。ある会社の社長の言葉ですが、成功するかしないかは、自分に知識があってできることをやるかやらないかだけの差という意味。どうしても表面的な華やかさやかっこよさ、コストパフォーマンスやタイムパフォーマンスの良さに目が向きがちですが、自分にできることをコツコツと続けていくことが非常に大事だと思っています。