先輩起業家インタビュー
Interview
富山市下大久保の国道41号線沿いに立つ『ドアマード』は、玄関ドアと窓に特化したリフォーム専門店です。玄関ドアの取り替えや、エコ内窓の設置などを通して、住まいの断熱性や防犯性などを高め、地域の方々に快適かつ安心な暮らしを提供しています。2024年3月19日に同社を設立した代表取締役の伊藤隆行(いとう・たかゆき)さんに、創業までの経緯や苦労、公的機関の支援、これからの展望などをお聞きしました。
以前は、24年間ほど住宅リフォーム会社で営業職を務めていました。さまざまなリフォームの中でも、お客様の満足度が非常に高かったのが、玄関ドアと窓。「その日のうちに暖かくなった」「音が静かになった」などといった喜びの声をいただき、より多くの方に快適な住空間をご提案したいと思うようになったのが、設立のきっかけです。玄関ドアと窓のリフォームに特化したお店が少なく、リフォームできることを知らない方も多いため、その効果を広めていきたいという思いもありました。
また、窓やドアに対する国の補助金額が大幅に増えたことも、設立のきっかけのひとつです。国はカーボンニュートラルを目指し、住宅の断熱性能を高めてエアコンなどの使用削減を推進しています。国が住まいの重要性を認めている証と捉えたことも、自身の背中を押す形になりました。
現在の対応エリアは、富山市内の立山通りから南部にかけて。その地域にお住まいの方々に対して、玄関ドアや窓のミリ単位の測定から、見積もりの提出、メーカーへの発注、施工管理まで一貫して行っています。施工そのものは協力業者の方にお願いしているため、工事の際お客様は私の顔しか知りません。不安感を与えないよう、必ず現場に顔を出すことを徹底しています。そうした日々の中、「あなたに頼んで本当に良かった」と、笑顔で言っていただけることが、この仕事のやりがいです。
かつて玄関ドアのリフォーム工事は1週間ほどかかりましたが、メーカーの方々の努力によって商品が進化し、今では1日ほどで終わらせることが可能になりました。お客様が補助金を活用される際は、申請書類の作成や手続きのサポートも行っています。
設立の1年ほど前には、富山商工会議所の「創業ビジネススクール」に通いました。1年間に6回ほど、弁護士や金融機関の方など多分野の専門家の方々から、経営などに関する知識を教わることができました。そのおかげで、会社設立に欠かせない書類の作成を着実に進められました。最終日には自ら手を挙げ、ビジョンを皆さんの前で発表することで、改めて自身の課題を把握することもできましたね。また、創業を目指す異業種の人たちと出会えたことも得難い経験になりました。興味のある方は絶対に参加した方がいいです。
その講義で知ったのが、富山市が実施している「とやまチャレンジ創業応援補助金」です。富山市内で新たに創業する人などに対して、事業の開始に必要な費用の一部を補助するというもので、補助限度額は50万円以内。無事申請が通り、チラシの制作に活用させていただきました。
創業当初は実績や信用がないため、商材の仕入れが困難でした。また、コピー機のリースを受ける際にも、結構な時間を費やしました。一方で、資金面ではさほど苦労しませんでした。最初に必要なものは自動車や電話、家賃、倉庫だけでしたので、高額な初期投資が不要だったからです。また、受注後に材料を購入して施工するため、在庫を抱えることがない点もその理由です。
設立後は、前職で培った広告宣伝のノウハウを生かし、その制作に着手。今は、チラシやホームページ、野立て看板、CMなどの相乗効果によって、多くの問い合わせをいただいています。特に自分の顔写真入りの看板は、反響が大きいですね。
おかげさまで、創業後の事業は順調に進んでおり、売り上げなどは想定を超えています。体がつらい時はありますが、この先の10年、20年を勢いよく突き進んでいきたいと思っています。
創業前から商工会議所青年部などに入っており、経営者の知り合いがたくさんいました。彼らからの助言を受けて、お披露目パーティをホテルで開催したところ、124名もの方々がご参加くださいました。その時に皆さんの前で「北陸で1番になる」と宣言したため、有言実行が私の目標。5〜7年後までには実現したいと思っています。
富山のお客様は、ご自宅の近くに店舗があると安心される方が多いので、まずは今の対応エリアでお客様の困りごとを解決していきたいと考えています。その次は、富山市北部にお店を構え、その次は中心部、さらには東西へ拠点を拡大していき、最終的には県内を網羅する予定です。そのためにも、今後はお店を任せられるような仲間を増やしていきたいと思っています。
仲間づくりに尽きます。できるだけコミュニティに参加して、経営者との付き合いを増やしてください。「この人が頑張っているから、自分も頑張らなきゃ」と、精神的な励みになります。私が大切にしているのは、相手が困っていたら助けること。そうすることでお互いに信頼関係が生まれ、人とのつながりがより増えていきます。
もちろん、家族も大事です。できるだけコミュニケーションをとって、家族に仕事への理解を深めてもらうことも大切だと思っています。