先輩起業家インタビュー
Interview
令和6年5月17日、富山市内に独自の本格的なライティングとヘアメイク設備を備えるフォトスタジオ『mag (マグ)』がオープンしました。同スタジオのオーナーであるカメラマンの中山直人(なかやま・なおと)さんに、開業までの経緯、撮影へのこだわりなどをお聞きしました。また、開業にあたって中山さんが融資を利用した「日本政策金融公庫」の川崎明生(かわさき・あい)さんにもインタビュー。お二人に出会いから開業後までのお話も語っていただきました。
中山さん:
出身は静岡ですが、富山には父の実家があります。大学進学などで一旦県外に出ましたが、会社員時代にUターン。退職後にカメラマンを始めたのは、ひとえに写真を撮ることが好きだったからです。美容師である妻の作品を撮影してコンテストに出品しているうちに、他の美容室さんからお声がけいただくようになり、受賞歴に比例して周囲の方々からプロとして認められるようになっていきました。基本的には独学でしたが、カメラマンの先生や美容師の方々に育てていただきましたね。また、都内のアカデミーやスタジオで改めて基礎から応用までを学び直したことで、オリジナリティだけでない、理論的な思考を培うこともできました。ただ、大量の機材を保管でき、大型の照明機材を沢山組み合わせた大規模なライティングを組んだり、大人数のお客様を撮影したりできる場所がありませんでした。もっと撮影の幅を広げたいという思いを実現するために、フォトスタジオの開業を決意したのです。
中山さん:
業務内容はもちろん写真撮影で、最も得意なのは美容の撮影で鍛えた人物撮影ですが、商品や建築、イベント撮影など、ご依頼いただければ何でも撮らせていただいています。撮影機材を車に詰め込んでの出張撮影やロケ撮影も行っています。
人を対象とした撮影に関するこだわりは、その人の魅力を最大限に引き出すこと。そのために、できるだけ時間をかけてお話をした上で、美容師さんとも入念な打ち合わせを行い、ヘアメイクやライティング、撮影環境までをオーダーメイドで作ることを大切にしています。特にポージングやライティングは、ほんの数ミリの角度や光の当たり方の違いで印象が大きく変わってくるんですよ。
そうすることで、撮影後にお客様から「私じゃないみたい」「こんな自分見たことない」と喜んでもらえた時が一番嬉しいですね。特に男性は受身な方が多いのですが、会話の中で「ちょっとかっこよく撮られたい」という思いがこぼれることがあります。そんなふうにお客様との心の距離が縮まった時や、お客様自身も気づいていなかったようなご要望に応えられた時にすごくやりがいを感じますね。
中山さん:
最初は、自己資金をもとに今よりも少しこぢんまりとした物件で開業する予定でしたが、商工会議所の方から融資の申請を勧められました。お金を借りられるのなら物件に妥協せずに済むと考え、日本政策金融公庫さんをご紹介いただきました。それが、川崎さんとお会いしたきっかけでしたね。
川崎さん:
2023年11月に商工会議所で開催させていただいた相談会の時でした。その後、事業計画をご提出いただいた時には、私の上司がお話を伺いました。
中山さん:
事業計画は、インターネットを見ながらざっくり作っていましたが、かなりダメ出しされました(笑)。悔しくて、正月休みに再度作り直して再提出したらOKをいただき、お話を進めていただけましたよね。
川崎さん:
申し込みに至るまでに何度か事業計画の手直しをしていただきましたが、こちらの指摘にも快くご対応くださいました。素早く丁寧にレスポンスしてくださるその誠実なお人柄も、好印象でした。
中山さん:
細部に至るまでしっかりチェックしてカバーしてくださったので、最終的な事業計画に自信と安心感を持つことができました。公庫さんはいい例も悪い例も知っていらっしゃると思うので、計画通りに進めていけば間違いないと、判子を押していただけた気持ちになりましたね。私が利用した公的機関は公庫さんだけでしたが、電話やメールでの相談や質問などにすぐ返事をくださったことも心強かったです。
川崎さん:
中山さんの事業計画の優れた点は、大きく3つありました。1点目は、撮影に関する技術力です。美容師さんが作られたヘアスタイルを撮るコンテストがあり、多数の受賞歴をお持ちでした。スマートフォンでも撮影できる現代において、フォトスタジオの創業は難しいと考えていましたが、お客様のご要望に対応される優れた技術力には、確かなニーズがあると感じました。2点目は、人脈。美容師さんのお知り合いが多く、基盤となる売り上げが見込まれました。3点目は、このスタジオでないと実現できないことが的確に盛り込まれていて、投資をしてスタジオを持つことにメリットがあると、私も思いました。
中山さん:
そうだったのですね。3点目のこのスタジオでしかできないことは、大人数の撮影と大規模なライティングです。これまでは撮影環境やご要望によってはお断りせざるを得なかったような内容、規模感の撮影が、ここでなら実現できます。
公庫さんの融資は、ありがたいですね。開業するなら、幅広いお客様に喜んでほしいと思っていたので、融資によって物件の選択肢を広げることができてよかったです。公庫さんへの相談後、すぐに今の物件に出会いまして、トントン拍子に進みました。
中山さん:
スタジオ開業をきっかけに、素敵な出会いが生まれただけでなく、これまでもお世話になっているお客様からのご紹介なども増え、おかげさまで毎日楽しく仕事ができています。また、様々な業種の人たちとものづくりの話ができる場にもなりました。これからも「コツコツ丁寧に」をモットーに、いい写真を撮っていきたいですね。
川崎さん:
『mag』というスタジオ名の由来はいくつかありましたが、その内の1つが「憧れの雑誌のような素敵な写真が撮れる」という意味の「MAGAZINE」の最初の3文字でしたよね。こういうコンセプトがしっかりあって、それに向かった事業計画や開業後の事業展開のビジョンが明確だったことから、今うまくいっていらっしゃるのだろうと思います。
中山さん:
公庫さんの支援もあっての今だと思います。ありがとうございます。正直申し上げると、今回の取材のお話も、川崎さんと上司の方からのお話でなかったらお受けしていなかったと思います。お二方が見ているので、これからもみっともないことはできないですね。
中山さん:
やりたいことがあるのなら、あまり悪い方へ考えずに、とにかく行動したらいいと思います。すると、結構道が開けてくるので。
川崎さん:
創業にあたって、事業計画を1人で考えていると迷うこともあると思います。まずは計画を立てた段階で、公庫にご相談ください。第三者の視点でアドバイスをいたします。