先輩起業家インタビュー

Interview

学生が気軽に立ち寄り、話ができる場を提供

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富山市五福の合同会社『Banca』は、学生が気軽に立ち寄り話ができる場所を提供するとともに、学生が前向きに進むためのきっかけづくりを事業として行っています。運営するのは大学生の久高諒也(くだか・りょうや)さん。在学中に始めたライター業やこれまでの経験、人とのつながりを生かして、令和5年5月31日に会社を設立し共同代表を務めています。創業までの経緯や事業の目的、これからの展望などについて伺いました。

起業への関心は中学生の頃から

沖縄で生まれ育ち、読書が好きで中学生の頃からは起業に興味があってビジネスに関する本をいろいろ読んでいました。本に書いてあった水耕栽培技術に触発されて、高校生のときに仲間を集めて家庭用の野菜栽培キットをつくる研究会を立ち上げました。起業には至りませんでしたが、自分なりに戦略的に考え、事業計画をつくり行動したことの最初でした。大学受験の際は経済的な制約があるなかで、地元の沖縄県を出る、メンターを見つける、起業の仲間を見つけるという3つの目標を立てて、2019年4月に富山大学に入学しました。偶然にもゲストハウスの開業を目指していた4年生の3人組と出会い、その先輩たちに交じって社会人の方と交流する機会を得て、メンター的な存在となる丸山修平さんと知り合いました。丸山さんは富山市出身で大手企業の営業として活躍した後、エンジニアやスタートアップ支援などに携わった経験豊かな方です。わずか1カ月足らずで目標を達成して、先輩たちの起業準備を手伝うようになり、大学は半年通って休学しました。

新型コロナ禍、家計を助けるためライターに

2020年に入り、新型コロナ感染拡大の影響で、実家の家計を支える母が職を失いました。進学を控えた弟がいて生活を助けようにも、奨学金を受けて自分で生活費をやりくりしているなかで仕送りするのは難しく、復学も危うくなる。困り果てていたときに、ライターの仕事を提案してくれたのが、丸山さんでした。僕が文章を書くのが好きで、それを仕事にしたい思いがあることを知っていて、幅広い人脈から早速、東京在住の経営者の方を紹介してくださり、その方の話を聞いて文章としてまとめてブログで発信する仕事を始めました。その方の紹介で依頼が増えて、次第に安定して収入を得られるようになりました。依頼者のほとんどが経営者やその道のプロの方でお話から学ぶことも多いです。今は発信内容の企画・提案から携わることが増えています。

人と話すことで自分の考えや行動を省みる

banca04.jpg開業したゲストハウスは、学生、社会人、宿泊者の交流スポットでもあり、そこで学生から相談を受けることがよくありました。起業や人間関係、自分のことなど悩みや内容はさまざまですが、アドバイスなどしなくても、学生たちは話をすることで、本当は何がしたかったのか、どうしてそう思ってしまうのかとか、思考が整理されていく様子が感じられました。手元にはスマホがあって、自分の考えや心の状態、行動について深く省みる内省の時間が減っているからか、情報や周囲の言葉に振り回されやすいのかもしれません。丸山さんとは以前から、学生や若者が羽ばたくきっかけをつくる事業を立ち上げたいという共通する思いがあり、学生が気軽に立ち寄って話ができる場を提供して、背中を押してあげるようなことをしていこうと、2023年5月に丸山さんと会社を設立し、空きテナントを借りて6月から僕が常駐して運営しています。社名には千変万化や水耕栽培技術に挑戦するきっかけとなった蕃茄(トマト)など複数の意味や思いを表しています。

Sketch Labで交流や人とのつながりを得る

富山市のビジネス交流・共創施設であり、会員制コワーキングスペースでもある「Sketch Lab(スケッチラボ)」には、大学の先輩たちを通して2020年の創設時から関わり、学生研究員として活動しました。目標や挑戦したいことを見つけて主体的に行動していく学生を応援する制度で、まちづくりやビジネスを通じた地域課題の解決に関わる社会人や学生たちが集まり、さまざまなプログラムを通しての学び、交流があり、幅広い方々とのつながりが得ることができました。クラウドファンディングを実施した際も、知り合った方々の支援のおかげで目標額を達成することができました。

機会の格差をなくし、未来や希望がもてる環境を

IMG_0950.JPGBancaでは、売上よりも、とにかくたくさんの学生たちに向き合うぞという気持ちが強く、かっちりした事業計画がないぶん、実験的なことにも取り組めています。第1歩を踏み出せないでいる学生たちと社会人をつなげてイベント出店したり、自分も企画に参加したりして楽しんでいます。ライターの育成も始めました。丸山さんは常駐していませんが、会社経営に必要な事務的なことをサポートしてくれて、家賃や経費も多めに負担してもらったり、ビジネスマナーを教えてもらったり。器の大きさに助けられています。
僕はいわゆる貧困層で育ち、苦労はしましたが、困った者同士がお互いに助け合って暮らしてきました。自分が得意とすることや趣味を生かして、境遇による機会の格差をなくし、少しでも未来や希望がもてるような環境づくりに貢献できたらという思いがあります。富山市内にはSketch Labのほかにも、インキュベーション施設「HATCH(ハッチ)」や経営者と大学生をつなぐ会員制バー「裏門」もあります。悩みや気分に応じて、予定を合わせなくても行ける場所があちこちあれば心理的にも安心ですし、立場も年齢も住む場所も異なる人たちが交流する機会を増やすことを、今後も続けていきたいと思います。

これから起業・創業を考えている方へ

banca02.jpg起業は手段であることを忘れずに。自分が何をしたいのか、どんな人のために活動したいのかを明確にすることが大切だと思います。学生で起業を目指す方には、思い切り遊び、とことん面白がれることを見つけることをすすめています。そうしたことが自分の核となると思いますし、それが逆境を乗り切る力となり、モチベーションをもって継続できるカギを握ると考えています。

関連リンク:Sketch Lab(スケッチラボ)