先輩起業家インタビュー
Interview
富山市蓮町の『SCOP TOYAMA』内にある『cafe companio(カフェ カンパニオ)』は、バリスタとハーバルセラピストであるオーナー夫妻がそれぞれスペシャルティコーヒーやハーブティーでもてなしてくれるカフェです。ランチメニューやスイーツはハーブやスパイスを巧みに使った自家製のもの。令和5年2月23日に同店をオープンしたオーナーの桧垣慶治(ひがき・けいじ)さんと望(のぞみ)さんに、創業までの経緯やお店の特徴、活用した公的制度や事業、これからの展望などをお聞きしました。
望さん:
小学校高学年の頃から自分のお店を持ちたいという夢がありました。雑貨や洋服のお店をめぐりながら、いつか自分の好きな空間でお店をつくりたいという思いが強くなっていきました。 服飾系短期大学への進学を機に上京し、卒業後は都内のアパレル会社で働いていましたが、病気のために入院。治療のためしばらく食べても匂いも味もわからないという辛さを経験し、日常的においしいものを食べられることの幸せを実感したことが、カフェを開くことのきっかけになりました。 退院後にカフェ経営のノウハウを学べる専門学校へ通い、そこでバリスタを目指していた夫と出会いました。夫も私と同じように、自分のオリジナルの空間でお店をつくりたいという思いがあり、2人でカフェを開くという夢に結びついていきました。
望さん:
都内のカフェなどで修業しながら、当時住んでいた横浜を中心にテナントを探していましたが、賃料が高いうえに初期費用がネックとなっていました。子育てと起業の両立を考えると、身近にサポートしてくれる親がいる富山に戻ることが現実的ではないか。そう思い始めたときに、「とやまUIJターン起業支援事業」を見つけて、思い切って応募しました。事業計画書を書くうちに、漠然としていたイメージがリアルになっていくのを感じ、「オープンできる!」という自信と意欲がわいてきました。並行して店舗探しをしていると、母が富山県創業支援センター(SCOP TOYAMA)のチャレンジショップを教えてくれました。
慶治さん:
私は横浜市出身で、富山に移住して開業することには迷いもありましたが、設備が整った環境で開業できることや、敷地内に富山県創業支援移住住宅がある利便性、そして自然豊かな環境で子育てできることが決め手になりました。
望さん:
2022年5月頃に申請して、8月に採択が決まり、翌2023年2月の開店と移住に向けて慌ただしく準備を始めました。1月上旬まで勤務して、富山へ引っ越したのが開店日の約1か月前。すべてがギリギリで、予定していたプレオープンが実施できませんでした。そのため初日はバタバタになり、かなりお客様を待たせてしまいました。
慶治さん:
足りない備品があったり、仕込み量を見誤ってロスを出したり。そこから日々改善を重ねて、オーダーを受けて料理をスムーズに提供できるようになりました。
望さん:
夫がコーヒーと料理とパンを、私が主にホールとデザートを担当しています。以前働いていたカフェで、ハーブを活用した料理や多彩な楽しみ方を知り、その後、ハーブ専門店に勤めてハーバルセラピストの資格を取得しました。ハーブやスパイスをオリジナルレシピで組み合わせて、料理だけでなく、スイーツやドリンクにも活用しています。
慶治さん:
スペシャルティコーヒーは、以前勤めていたコーヒー専門店で焙煎部門を統括されていた方に焙煎をお願いし、オーダーのたびにドリップして提供しています。 料理も前菜から丁寧に手作りし、お客様からはよく「レストランみたい」と言われます。富山は新鮮でおいしい食材が手に入りやすく、季節ごと、旬の地元食材を取り入れたメニューを考える楽しみがあります。
望さん:
お店で使っているアンティークの食器や家具、飾りの小物などは、2人でお店を持つと決めてから少しずつ買い集めてきました。メニューの装丁デザインもアンティーク調にして統一感を醸し出しています。 実は夫と同じ店で一緒に働くのは初めてで、その意味でもチャレンジでした。どちらも思いが強くて、顔に出やすいタイプ(笑)。何でも早めに話し合うように心掛けています。
慶治さん:
これからイベント出店にも積極的に参加して、富山市内外でお店の認知度を高めていきたいと思います。将来、いちから自分たちのお店をつくることを視野に入れているので、ここでいろいろと試しながら、しっかりとお店の形を定めていこうと思っています。
望さん:
店名の「companio(カンパニオ)」はラテン語で、“パンを分け合う人々=仲間や家族”という意味があり、仲間や家族のように寄り添う、居心地の良いカフェでありたいと願って名付けました。ヨーロッパの田舎町に佇んでいるようなノスタルジックな雰囲気のお店をイメージしており、新しいコミュニティが生まれるような場所になれたらと思っています。
慶治さん:
お店を持ちたいと思い始めてから、2人で写真や雑誌の切り抜きを集めたり、訪れたカフェのメニューや感想を書き出したりして、イメージマップとしてまとめてきたことが役立ちました。コンセプトがはっきりしていたので、短い準備期間でもオープンできました。
望さん:
経験から言うと、特に飲食店の方は、プレオープンを必ず行った方がよいです。 勢いも大切です。躊躇していたらあっという間に時間が過ぎていきます。後悔しないように、やりたいことに向かって行動することをおすすめします。