先輩起業家インタビュー

Interview

ボードゲームで遊べるカフェから自社製品を出版する会社に成長

IMG_2604.jpg富山市五福、富山大学の近くにボードゲームの卸売業と出版業を行う「株式会社Engames (エンゲームズ)」があります。ボードゲームとは、専用のボード上で駒などを動かして競うゲームのこと。同社を平成29年9月に創業、令和2年9月に設立し、令和4年度には富山市内の優れた創業者を顕彰する「富山市ヤングカンパニー大賞」を受賞。同社の代表取締役社長を務める杉木貴文さんに、創業に至った経緯や事業内容、ボードゲームの魅力、これからの展望などをお聞きしました。

創業は、家業と両立して働くために

私の実家は460年の歴史を持つ寺院ですので、跡を継がなければいけません。慶應義塾大学を経て東京工業大学大学院を修了した後、2007年に大手情報通信会社に入社しましたが、会社勤めと家業の両立は厳しいだろうと。うまく両立できるような仕事を考え始めたのが、創業のきっかけです。
ボードゲームの専門店を選んだのは、両立できる可能性が高く、幼少の頃からゲームが好きだったから。カードゲームのプロプレイヤーとして海外を転戦していた時期もあるんですよ。今はほぼフルタイムで働いていますが、従業員1名、アルバイト2名を雇っています。5年後に家業を継いだ後は、経営だけにシフトしていこうかなと思っています。

ボードゲームを卸し、出版する

IMG_2600.JPG今は約50〜60の自社製品と、約1,400の他社製品を取り揃え、卸売業と出版業の2本柱で展開しています。出版業とは、海外製ボードゲームの日本語ライセンスを取得して、翻訳・編集した日本語版を自社商品として出版する事業のこと。代理店を通してメーカーと契約を結べば、基本的に日本語の権利は当社の独占。日本語版を出版する権利と、出版したものを日本国内で流通できる権利がセットでついてきます。このビジネスは、書籍の日本語版出版によく似ているんですよ。
一方、卸売業では、自社製品と他社製品を問屋やホビーショップに卸しています。問屋などから当社製品を仕入れて販売している店舗は、全国各地に400ほど。この流通ネットワークは自然に拡大していきました。また、店舗で一般消費者に直接販売する小売業も行っています。

出版業を始めたのは、常連客の声がきっかけ

IMG_2629.JPG創業当初は、ボードゲームを仕入れて販売するほか、ボードゲームで遊べるカフェを備えた形でスタートしました。いわゆる小売店ですね。それから3ヶ月ほど経ち、ボードゲームが市場にどれくらい流通しているのかが分かってきたので、自社製品の制作を考えるようになっていきました。ちょうどその頃、常連さんから「日本で流通していない海外のボードゲームがほしい」と言われ、海外にあるメーカーの社長をFacebookで見つけてダイレクトメールを送ったんです。最初はあまりいい返事ではありませんでしたが、最終的に承諾をいただけて。2017年12月に海外から輸入し、説明書を日本語に変えて出版しました。そのゲーム名は「サグラダ」。以来、自社製品を手掛けるようになりました。翻訳やデータの作成、デザイン、印刷は外注に依頼しています。

ニッチな市場ならではの苦労と喜び

公的制度や機関などは活用せず、開業の半年前ぐらいに自分で事業計画を考えました。苦労したのは、銀行で融資を受けるとき。ボードゲームの自社製品を全国に流通させている会社が富山にあるとは思われなかったのでしょう。最初はなかなかご理解いただけませんでしたが、今はだいぶん信用していただけるようになりました。
国内におけるボードゲームの市場規模は小さく、多くて何十万人しか愛好家がいないので、当社製品をよく買ってくださる方は顔が分かるレベルです。その分、そういう方々の評価がダイレクトに返ってくることがこの仕事の怖さであり、大きな魅力でもあります。先ほど市場規模は小さいと言いましたが、ボードゲームのイベント入場者数は年々増えており、右肩上がりで伸びている市場でもあります。

富山にいながら、世界と戦えるビジネス

IMG_2612.JPG個人的に2021年の売上を推計したところ、当社が全国9位だったんです。ボードゲームは、ついこの間まで1人で運営していた会社がトップ10に入れるぐらい市場の小さい産業ですが、地方にいることがデメリットになりません。大きな工場や人的資本がそれほど必要ではないので、地方にいながら日本、そして世界に向けて戦っていけます。日本ではトップ10は当社以外すべて東京でしたが、ボードゲームの先進国であるドイツやフランスでは地方にトップの企業が点在しています。当社もトップを張れるようにがんばっていきたいですね。
また、富山は立地的にボードゲームの産業に向いています。今、世界中でボードゲームの印刷工場が集積しているのは上海ですが、週3〜4回直行便が運航しているので、2〜3日で製品が手元に届きます。また、富山は日本のほぼ真ん中に位置しているので、全国各地の物流拠点としても最適。さらに土地代が安価なので、商品を保管する倉庫代もそれほどかかりません。今は富山を日本、そしてアジアのボードゲームの主要拠点にすることを目指しています。

これから起業・創業を考えている方へのアドバイス

開業したいビジネスによって誰に相談したらいいかが変わってくるとは思いますが、信頼できる人を見つけることが一番大事だと思います。僕の場合は友人でした。かつてのゲーム友達が全国各地のゲーム会社に就職しているので、いろいろなことを相談しましたね。