先輩起業家インタビュー

Interview

コーヒーのプロがたどり着いたチョコレート

IMG_2587.jpg富山市中心街の総曲輪通り商店街にあるBEAN to BAR Chocolate TOYAMA『Humming Bird』は、県内では珍しい無添加チョコレート専門店です。「BEAN to BAR」とは、カカオ豆からチョコートができるまでの全工程を自社で一貫管理して製造するスタイルのこと。同店を令和4年11月に創業し、令和5年1月18日にオープンしたオーナーの時女宗久(ときめ・むねひさ)さんに、創業までの経緯やお店の特徴、活用した公的制度や事業、これからの展望などをお聞きしました。

社会に対する高い意識から、起業の道へ

IMG_2566.JPG高速道路のSAやPAを運営する会社で、レストランや売店の運営、総支配人などを務めていました。一度コーヒーチェーンに転職しましたが、先の会社から声をかけられて戻ったんです。企業が担う社会的責任「CSR」の部署で働きたいなと思っていた頃、コロナによって車の通行量が一気に激減。時間に余裕が生まれたのを機に、MBAの基礎クラスを受講し、自分の強みは現場だと改めて実感しました。一時は社会問題をビジネスの手法で解決するソーシャルビジネスの会社への転職も考えましたが、それを自分の力でやってみようと思ったのが創業のきっかけです。
コーヒーチェーンでは約13年働いていたので、コーヒーのプロという認識がありました。ただ、コーヒーで起業しても競合相手が多く、コーヒー1本では厳しいだろうと感じていました。CSRの観点から地域の食材が使えるもの、そしてコーヒーと相性が良く、賞味期限切れのリスクが低いものと考えた末にたどり着いたのが、チョコレートだったんです。さっそく静岡のチョコレート屋さんでチョコレートの作り方を学びました。

地域の食材を生かしたチョコレートを提供

IMG_2571.JPG「Humming Bird」では、カカオ豆を原料にした手作りのチョコレートを販売しています。富山の食文化を表現するために、シロエビやホタルイカなどを粉末にして練り込んでいるところも特徴。気になる県産食材があればホームページを見て問い合わせ、直接訪問・交渉して仕入れています。
地域の食材にこだわっているのは、CSRの観点だけでなく、実体験に基づくものでもあります。私は県外出身ですが、富山には父の実家があったので、子どもの頃に食べた昆布締めやブリ、鱈の子つけ、真子の子付けなどが記憶に焼き付いています。県外から見ると、富山には上質な食材がいっぱいあるんですよね。
今は、約15種のチョコレートを販売していますが、お土産によく選ばれているのがホタルイカ。カジュアルギフトとして定着して、県外の方に富山の豊かな食文化が広まればいいなと思っています。

あえて商店街に店を構え、地域の縁側へ

IMG_2582-2.jpg創業を機に、富山に移住しました。街中の衰退は、富山が抱える問題の一つですよね。商店街に出店したのは、その解決に少しでも貢献したかったからです。ただ、街中は郊外よりもご年配の方が多く、ビジネスにおいては決してマイナスではありません。向かいの「地場もん屋 総本店」さんに買い物客の列ができるのを見た時に「いける!」と思いましたから。当店も地域に溶け込んで多くの人に信頼してもらえるようになっていきたいですね。
お店が「地域の縁側」になるよう、カフェを併設し自家焙煎で淹れたコーヒーも提供しています。屋外にもベンチを用意しているので、縁側でお茶をするような感覚で気軽に来てもらえたらと思っています。

富山には、頼れる制度や機関がたくさん

退職から創業までの間には、Twitterで得た情報をもとに、いろいろな制度を活用しました。最初に参加したのは、富山市新産業支援センターさんの「みんな起業家、集まらんまいけ!」 。担当者が資料作りを伴走してくれるんです。どんどんブラッシュアップできましたね。次に、本格的に事業計画を作るために、富山県新世紀産業機構さんの「富山県よろず支援拠点」や、富山商工会議所の「とやま創業塾」にも足を運びましたね。会社員時代と全然違うのは教えてくれる人がいないということ。けれど、頼れる先がいくつもあるという安心感を得られたのは大きかったですね。

創業後、まったくストレスがありません

IMG_2596.JPG一番困っているのは売上予測です。まだ基本的なデータがなく、オープン景気とバレンタインが重なったこともあって、経営計画を立てるのが難しいですね。
ただ、今はストレスゼロの日々。自分の価値観にそぐわないことや信念を曲げなくていいことが、その要因だと思います。チョコレートの製造は全部手作業なので身体は大変ですが、最終的にチョコレートという形になるので、ものづくりの感覚を味わえるところもいいですね。
これからはワークショップのような形で人の交流を生み、縁側らしさを広げていきたいですね。今年の8月頃には小学生の夏休みの自由研究に利用できるようなチョコレート作りのワークショップを開催したいなと思っています。

これから起業・創業を考えている方へのアドバイス

「自分のやりたいこと」「世の中から求められていること」「プロの目から見てどうか」、これら3つをクリアしているビジネスなのかどうかを納得できるまで考え抜いて、自分のコアをしっかり固めることが大事です。自分の中にコアがないと取捨選択も優先順位もつけられず、周りに流され、時代に踊らされてしまうので。